「パパママに寄り添い、不安を和らげる記事を届ける」人気連載編集者がコンテンツ制作で大切にしていること(前編)

コノビーのコンテンツには特定のテーマを続きもので掲載する「連載」があり、「母と娘」や「姉妹」、「日常生活で感じたこと」などを取り上げた連載を常時掲載しています。

連載の中でも、昨年6月から今年3月まで約9ヶ月にわたり全44話でお届けした『「小1の壁」のむこうに』は、子どもの小学校入学をきっかけに同じマンションに住む4人のママとその家族が直面するさまざまな困りごとやそれに伴う戸惑いをリアルな目線で描き、公開初日で10万PVを超える話が出るほど大きな反響がありました。

人気連載記事『「小1の壁」のむこうに』はどういった背景で生まれたのか。担当編集者の浦脇、編集長の瀧波にインタビューを実施。企画背景から制作の工夫、悩んだことなど制作の裏話を通じて、コノビーがコンテンツ制作で大切にしていることなどをお伝えします。

「私はこのライターさんといつか連載記事を描きたい!」

『「小1の壁」のむこうに』のアイデアのもとが生まれたのは、2017年に遡ります。当時、浦脇は連載を持ちたいと思っていたものの、「ワーママを主人公にした何かを描きたい」といった感じで、イメージは漠然としていました。おぼろげだった連載テーマが小1の壁に決まり、連載が実現したのには、「2つの大きな理由があります」と浦脇は言います。

浦脇:
一つ目は『「小1の壁」のむこうに』の執筆を担当した、ライターのとげとげ。さんとの出会いです。私がとげとげ。さんの編集担当になったのは2017年のことでした。とげとげ。さんは「子どもの服装が時にダサくなる理由」や「イヤイヤ期に子どもが床に突っ伏して抵抗するお決まりのポーズ」など、子育ての日常を取り上げて明るいトーンで仕上げてくるライターさんでした。

でも、とある記事をきっかけに私の中のとげとげ。さんへの印象がガラッと変わります。それが2018年1月に公開の「追い詰められたママのイライラは子どもに向かう。それを救ってくれたパパの言葉」という記事でした。

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仕事で疲れた状態で子どもたちの相次ぐいたずらにイライラの限界を迎えた後、「こんなはずじゃない」と感じるとげとげ。さん

この記事には、ワンオペ育児で追い詰められたママの心境が映し出され、現在も読まれ続けており、PV数は約50万に達しています。浦脇自身は双子の女の子のママで、かつて娘さんたちが「幼稚園に行きたくない」と登園をしぶったとき、どうしていいかわからず一緒に泣いたことがあったそう。育児を一人で抱えていた頃の自分を重ね、ラフを見た時に涙が出たと振り返ります。同時に、これまで明るめの記事が多かったとげとげ。さんが初めて提案したシリアスな切り口の記事を見て、浦脇はとげとげ。さんに強い興味を持つようになりました。

浦脇:
「とげとげ。さんって、こういう記事も描ける方なんだ…」と、記事内容に共感しましたし、2人のママで在宅ワークをしている共通点もあったことから、とげとげ。さんへの親近感が増した瞬間でしたね。やがて、「私が連載をするなら、とげとげ。さんとご一緒したい」と決めていました。

子どもが1年生になる前に「小1の壁」の実態を知っていたら心の準備ができたはず。だから私が発信しよう!

二つ目の理由は、2019年に浦脇が小学校の入学準備を扱った全5話の他の連載を担当したこと。連載記事内では学童の情報収集や入学後に必要な物の揃え方など、就学前のお子さんを持つパパママに役立つ内容が紹介されていました。ここまで聞くと、充分に小1の壁への対策になっていると思えるのですが、浦脇は「入学準備だけでなく、入学後のパパママの暮らしについてもっと踏み込んだコンテンツを作りたいと感じていました」と当時を振り返ります。

浦脇:
連載の編集をしていたときはちょうど私の娘たちが1年生になったタイミングで、私は子どもが小学生になることで起こる生活の変化に直面していました。たしかに入学準備や学童の情報収集は就学前の子どもを持つパパママが気になることですが、小1の壁はそれだけではありません。

たとえば学童であれば情報をどうやって得るかのほかに、子どもが馴染めるかも不安材料になります。そもそも学童が取りざたされるのは、子どもの下校時間と親の終業時間のギャップが原因ですから、働き方をどうするかも課題になりますよね。仕事の頑張り時と重なった場合は、夫婦間で家事と育児の見直しも必要ですし、そこで衝突が起こるかもしれません。

このように、小1の壁はいろんな形でパパママの生活に影響します。もし子どもが入学前にそのことを知れたら、私はもっと心の準備ができたと思うんです。コノビーの読者の多くは0~2歳の子どもを持つママ。その方たちが読んでも小1の壁の実情が伝わるような記事を描きたいと思うようになりました。 

「ワーママについての何か」と漠然していたイメージはこのときに「小1の壁をテーマにした連載」と具体化され、浦脇は企画書をつくり、編集長である瀧波に提出します。企画は通り、さらにとげとげ。さんも快諾し、ついに連載『「小1の壁」のむこうに』が動き出します。

何が「壁」か実態がわかりにくい。小1の壁とは何かを示す連載に期待

『「小1の壁」のむこうに』の連載を進めようと判断した理由は何だったのでしょうか。編集長である瀧波は次のように話してくれました。

瀧波:
小1の壁がどういうもので、パパママにどのような変化をもたらすのかを描くストーリーが良いと感じました。子育て環境の課題を表すワードに「ワンオペ育児」がありますよね。根底にある問題は育児に関わる人の手が足りないことなのですが、ワンオペとの言葉から育児をしていない方でも何となく推測できます。しかし小1の壁は言葉だけ見ても「何が壁なのか」をとらえにくい。だからこそ、実態をわかりやすく伝える連載は素晴らしいと思いました。コノビーのコンセプトである「子育てに、笑いと発見を」にも合っています。

またコノビーは2019年4月に運営企業の変更に伴って、メディアの運営方針も変わりました。その一つとして読者層の拡大を行っており、就学前後のお子さんのいる読者層にもアプローチをしたいと考えていました。その点において小1の壁は、まさに新たに獲得したい読者層の関心が深いテーマなので、連載を進めようと判断しました。そして何よりも、浦脇さんの熱意を感じたことが大きいですね!

実は20話で終わる予定だった

連載の登場人物は主人公でフルタイムワーカーの杏奈、時短の契約社員の由香、専業主婦の典子、シングルマザーの裕子の4人のママとその家族で、それぞれの小1の壁が描かれています。登場人物にモデルはいたのでしょうか。また全部で44話のプロットはどうやって作ったのかも気になります。

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浦脇:
登場人物にモデルはいません。私がとげとげ。さんに連載企画をご一緒したいとお伝えした後に、彼女が現在とほぼ同じ人物像をイメージし、さらさらっとラフを描いてくださりその場で決まりました。

当初、私は主人公のママを含む一家族が小1の壁を乗り越えていくストーリーを想定していましたが、とげとげ。さんから「ワーママ、専業主婦など異なるステータスのママを4人登場させた方が面白くなるのでは」というご提案をいただき、その考えを採用することにしたのです。後ほどお話しますが、このことによって記事のメッセージが強まることになりました。

また、プロットについてなのですが、この時点では20話で終わる予定でした。実はとげとげ。さんも私も、まさか44話まで話が広がるとは想像していなかったんですよ。結果的に44話まで話が膨らんだのは、連載開始後に起こった、ある出来事がきっかけでした。

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連載についての初打ち合わせの場で、とげとげ。さんがノートさらっと描いた登場人物のラフ。

約3年前、浦脇が漠然と「こんなことをやりたいな」と思っていたワーママについての連載。その後、信頼できるライターさんとの出会いや、自身が小1の壁にぶつかり、当事者となったことでどんどんイメージがまとまり、ついに企画が動き出しました。後編では、連載のストーリー展開に影響を与えた出来事を含め、浦脇が記事制作で大切にしていることをお伝えします。

(文筆 そのべゆういち)

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