22年度から新たな「男性育休」がスタート。パパは子育てをもっとしやすくなる!?

6月3日、育児・介護休業法の改正法案が成立し、2022年4月から(※)男性が育児休業(以下、育休)を現在よりも取りやすくなります。もともと育休は男性も利用できる制度であるものの、職場の空気を気にしたり、そもそも制度があることを知らなかったりすることで取得に至らないケースが目立ちます。今回の法改正はパパの子育てにどのようなインパクトを与えるのでしょうか。

内容によって施行時期は異なります。

個人への呼びかけから企業への意識改革にシフトした

育児・介護休業法の目的は「出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにする」こと。つまりパパママが働きやすいように育休があるわけですが、冒頭で触れた通りパパが活用できているとは言えません。厚生労働省の「雇用均等基本調査」で直近の育児休業取得率を見ると、女性が83.0%に対して男性は7.48%と大きな差があります。男性の取得率は過去最高ではあるものの、政府が目指す2025年までに30%には遠く及びません。

一方で政府は女性活躍をうたい、「2025年までに25歳~44歳の女性の就業率を82%へ引き上げる」との目標を立てていますから、男性が子育てに関わりにくい環境が続いては困ります。そこでママと同じく子育ての当事者であるパパが育休を取りやすくする環境を整備する法案が議論され、成立に至りました。

政府はこれまで「イクメン」なる言葉を作り、男性の子育てを推進してきました。しかし、パパが育休を取らない理由には「業務が繁忙で職場の人手が不足していた」「会社に育児休業が整備されていなかった」「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」など企業の課題を示すものが多いため、個人の努力だけでは限界があります。改正法案では、事業者が従業員に正しく認知させることを義務づけていますから、事業者にとっても、パパにとっても育休という制度を知るきっかけになります。

育休取らない理由

育休を2回に分けて取得

改正法案には、どのような内容が盛り込まれているのでしょうか。柱は、新たに設けられた「出生時育児休業」です。これは子どもの出生後8週間以内に4週間まで育休を取れる制度のことで、2回まで分割して取得が可能です。産後8週といえば、ママの体が回復するのに大切な時期。その間にパパが育休を取り、夜の授乳をはじめ家事育児をサポートできるメリットは大きいです。

また子育てのスタート地点でパパが育児に積極的に関わることでママとの育児スキル格差を防げますし、その後のパパとしての意識に好影響もありそうです。ちなみに出生時育児休業中には、労使の合意があれば一定の時間内まで就業もできるので、「本当は育休を取りたいけど職場の人に迷惑がかかるのは嫌だな…」と罪悪感を抱きにくくなりますね。

原則として子どもが1歳まで取得できる通常の育休においても、2回まで分割して取れるようになります。両者を組み合わせることでより細かく育休を取る時期を選べますし、繁忙期であっても長きにわたり仕事から離れずにすみます。

ママの仕事復帰時にパパが育休。夫婦で子育てを分担しやすくなる

厚生労働省の「男性の育児休業取得推進等に関する参考資料」では、改正法案でのパパの育休取得ケースが掲載されています。一例を見てみましょう。モデルケースでは、出生時育児休業として子どもの誕生後とママが里帰りから戻ったタイミングで各1回育休を取り、その後子どもが1歳になるまでの間に2回、合計で4回育休を取っています。時期についてはママの繁忙期や職場復帰に合わせれば夫婦で仕事と育児の両立がしやすくなります。

育休制度
出典:「男性の育児休業取得推進等に関する参考資料」

ほかには、企業に対する育休取得の申請時期がこれまでの「1ヶ月前」から「2週間前」に短縮されるほか、非正規雇用の従業員でも取りやすくなるといった緩和策も適用されます。また常時雇用する労働者数が1000人超の大企業は取得率の公表が義務づけられることになっています。施行のタイミングは項目により異なりますが、2022年4月から順次実施される予定です。

育休で家事と育児が習慣化

パパが育休を取り、子育てに関わることで、その後家事と育児に費やす時間が増えることがわかっています。内閣府がパパを対象に行った調査である「男性の育児休業取得が働き方、家事・育児参画、夫婦関係等に与える影響」では、平日・休日の家事・育児時間と育休取得経験の関係が示されています。育休非取得者よりも育休取得者の方が、平日の家事・育児時間が長いのです。育休を取ったパパは、家事と育児を習慣化していると言えそうです。

また「少子化社会対策白書」ではパパの家事育児時間が多いほど、その家庭に第二子以降が生まれているというデータもあります。夫の休日の家事育児時間が「なし」の場合、第二子が生まれたケースは10%ですが、「2時間以上4時間未満」では59.2%、「6時間以上」では87.1%と結果は歴然としています。パパの行動の変化が、少子化の解消に繋がってきそうです。

夫の家事育児と第二子
出典:内閣府 少子化社会対策白書

「妻のために夫ができることは、たくさんある」

Conobieでもパパの育休をテーマにした記事を発信しており、パパママのリアルを垣間見ることができます。

「産後、妻が死んじゃうんじゃないかと思った」育休中の夫が感じていたこと | Conobie[コノビー]

産後の母は大怪我をした人と同じ?産後しばらくしてから知った、夫が育児休業を取得した本当の理由。

conobie.jp

 

産後、疲れ切ったちよさんの姿を見て「子どもとふたりきにさせておけない」と思った夫。彼は産後の女性をけが人ととらえ、「休んでもらいたい」との気持ちで、2ヶ月間の育休を取りました。おかげで、ちよさんは体を休ませることができました。夫は「一緒にいられてよかった」「妻のために夫ができることはたくさんある」と振り返ります。

一方で、『「パパが育休を取りやすい世の中」にするために、忘れちゃいけない大切なこと』(しみずまみさん)では、商社勤務の夫がチームメンバーの育休取得を歓迎しつつも、欠員のカバーで葛藤する様子が描かれています。制度を軌道に乗せるためには、育休を取った従業員のカバーをどうするかを考えておくことが必要。その観点で言うと、分割取得ができ、一定の条件下で就労ができる新たな男性育休は、組織への負担を抑える効果がありそうですね。

新生児の成長を目の当たりにできた

パパが育休を取りやすい環境が整い、上司、先輩、同僚が続々と育休を取得して家事と育児をするのが当たり前になっていけば、「自分には育休は取れない」と思っていたパパの行動が変わっていくかもしれません。

Conobieメンバーの男性は、約3週間の育休を取得。

新生児の成長スピードは本当にはやくて、もし育休を取っていなかったら見ることができなかったと思います。子どもの今の瞬間は見逃したら二度と戻りません。そんな貴重な一瞬一瞬を隣で目の当たりにできたので、育休を取ってよかったと思います。

と嬉しそうでした。もちろん、育休を取る取らないは個人の判断です。ただ、仕事と育児の両立を実現するための選択肢が増えるのは良いことではないでしょうか。

(そのべゆういち)

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