コロナ禍でパパの家事・育児時間が増加。働き方の変化で夫婦間における役割分担の見直しが進む

新型コロナウイルスはパパママの生活に様々な影響を与えていますが、夫婦間における家事と育児の分担にはどのような変化をもたらしているのでしょうか。内閣府が今年6月に発表した「第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」の結果から見ていきます。

パパの協力が進むも、自粛生活で家事育児の絶対量も増えた?


下の図は、昨年5月から今年4〜5月までの1年間で、夫婦の家事育児時間の変化を表したものです。


出典:内閣府「第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」より

18歳未満の子どもがいる2065人を対象に家事育児時間がどう変わったかを聞くと、「増えた」(大幅に増加、増加、やや増加の合計)と答えた男性の割合は昨年5月には26.6%でしたが、今年4〜5月では36.2%に上昇し、パパが家事と育児に関わるようになっていることがわかります。しかし女性も33.8%から43.3%に上がっており、男女ともに家事と育児に費やす時間が増えています。

これは家族が自宅で過ごすようになったことで、食事の準備、掃除、子どもとの遊びなど家事育児の絶対量も増加したためと考えられます。また今年4〜5月時点の「家事育児時間が増えた」の内容を細かく見ると、女性の「大幅に増加」の回答率は男性の約2倍に達しており、ママが多くを担っている状況です。

こうした状況を踏まえると、自宅にいたまま食料や料理が手に入るネットスーパーやデリバリーサービスのほか、レトルト食品、家事時間の短縮に繋がる家電などへの需要は高まるのではないでしょうか。感染症の状況にもよりますが、家事代行サービスへの関心も強まっていくかもしれません。

テレワークをする夫はそうでない場合よりも「家事・育児の役割が大幅に増加」


続いて夫婦間での家事育児の役割分担を夫の働き方別で見ると、テレワークをしている夫はそうでない場合と比べて、より多くの役割を担っていることが示されています。


出典:内閣府「第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」より

上のグラフにあるように、「役割が大幅に増加した」の回答率は、通常の働き方をしている男性が5.0%に対して、テレワークをしている男性では12.8%と約2.6倍の差が開いています。通勤頻度が下がる、もしくは通勤がなくなることでパパが朝の準備や登園のほか、料理といった家事ができるようになったのではないでしょうか。Conobie編集部でも「夫が子どもの登園をしてくれるので、早めに仕事に取りかかれる」「お昼の準備は夫が担当することが多い」などの話が出ています。

ちなみに通常の働き方をする男性ほど「役割分担に変化がない」と答えていることから、夫の働き方の変化が家事と育児の役割分担を見直す一つのきっかけになっていると言えそうです。

パパの家事育児時間が増えると、夫婦の関係が良くなる


家事と育児の分担がうまくいくと、夫婦仲にも影響を与えます。「夫婦の関係が良くなった」と答えた人の割合は、「妻の役割が増加」では9.8%、「夫・妻の役割が増加」では11%ですが、「夫の役割が増加」では16.3%に増えています。


内閣府「第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」より筆者作成

分担をどうするかは家庭によって考えが違うので、正解はありません。ただ調査結果からは、パパが家事と育児を担うことが夫婦円満に繋がっていくことがうかがえます。

パパが家事と育児に積極的に関わることでママの負担が減ることは言うまでもありませんが、パパがママの大変さに気がつくことも結果の背景にあるのではないでしょうか。たとえば「食洗機で食器を洗う」という家事には、食器についた米粒やおかずの残りを洗い流す作業が発生します。子どもを乗せる電動自転車を快適な状態で使い続けるためにはバッテリー残量チェックと定期的な充電が欠かせません。「名もなき家事」が話題になったことがありますが、パパが家事をすることで見えづらいプロセスを知るようになり、ママのパパに向ける「家事の大変さをわかっていない」との不満が和らいだとも考えられます。

休校やオンライン授業時こそ、家事と育児の分担の重要度が高まる


新型コロナウイルスの影響が長引くと、休校や休園、学童に預けられないなど、子どもが自宅にいる機会が増えます。


内閣府「第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」より筆者作成

上の図のように、小・中学生の子どもがいるパパママのうち、今年4〜5月時点で「子どもがオンライン授業を受けている」と答えた人の割合は全国で26.7%。地域別で見ると東京23区では48%、地方圏では21.1%で、特に都内在住のパパママでは分担は関心ごととなりそうです。

実際、岐阜市では県立高校の2学期の授業を当面の間オンラインで行うことを発表しています。高校生であれば手がかかりませんが、もし小学校低学年の子どもがオンライン授業を受けるとなるとパパママが自宅にいる必要があります。こうした中で、夫婦間で仕事のスケジュールを共有し、家事と育児の分担を決めることの重要度は増していきます。

男性の育児休業取得率は過去最高。家庭に関わりやすい環境になってきた


パパの家庭進出の動きは、男性の育児休業取得率からも見て取れます。厚生労働省が今年7月に発表した「令和2年度雇用均等基本調査」によると、昨年10月1日時点での男性の育児休業取得率は12.65%で過去最高を記録。前年の7.48%から5.17ポイントと取得率は大きく上昇しました。


厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」より筆者作成

男性の育児休業取得率は2012年度〜2016年度まで1%台後半〜3%台前半を推移。2017年度に5%台に上がり、2020年度には7.48%に達しました。過去数年の上昇幅が1〜2ポイントだったことを踏まえると、前年比5.17ポイント上がったことのインパクトの強さがわかります。男性は職場の空気を気にして育児休業の取りづらさを感じるケースが多いですが、以前より男性が仕事から離れて子育てに関わりやすい環境が整ってきたと言えます。

2022年度からは、子どもの出生後8週間以内に4週間まで育休を取れる「出生時育児休業」が新設されます。また子どもが1歳まで取得できる通常の育休においても、2回まで分割しての取得が可能となり、男性が育児休業を取りやすくなります。新型コロナウイルスによる働き方の変化もあいまってパパが家事と育児に時間を割けるようになり、そのことが家事と育児を夫婦で協力しやすい環境作りに繋がっていきそうですね。

(文:そのべゆういち)

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